「植木屋さんだって植物に詳しいとは限らない」愛すべき人たち3

「植木屋さんだって植物に詳しいとは限らない」

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「愛すべき人たち」3
このお話しは、
或る園芸会社に私がいた時の
愛すべき人々のお話しです。


そこは、10人未満の小さな、
おもに庭を作ったり管理したり、
観葉植物を貸し出し管理したり、
葬祭関連の装飾をおこなったりの
植物関係に携わる会社だったのです。


私が初めて、
「イーさん」と対面したのは
面接に行ったその日の事でした。


面接に立ち会っていたのは、
社長と・・・、
社長の
お母さんもいたでしょうか。
はっきりは
覚えてはいませんが。

社長は、私と同年代で
1つか2つぐらい
上でしたでしょうか。

「イーさん」と同じくらい
すらつと背が高くて
穏やかな性格の方でした。

社長は、先代の社長が事故で
亡くなられたので若くて
会社を継いでいたのでした。


その先代の社長ですが、
地区の議員などもやっていて、
たいへん
豪快な社長だったようです。

たびたび、家に芸者さんを連れて
帰ってきたりしてたらしいですし。

これは
「アーさん」から聞いた話ですが、
従業員が八時には来ていて
「社長、仕事に出かけましょう」
と言っているのに。

先代の社長は、
「まだ朝飯を食っている所だから、
まっていろ」と、
「のんびりと、飯を食っているのを
従業員は待たされているんだぜ、
早い会社なら、
八時には現場に付いている
所だってあるのにな、まったく」
と、懐かしそうに話して
くれたことが有りました。



話は戻って若社長の方ですが、
家族からは「○○君」と
君付けで、
呼ばれているのでしたが、
社長は、そのように呼ばれても、
嫌な顔一つしませんでしたから、
むしろ、それを楽しんでいたのかも
知れません。

そして、社長のお母さんも、
ほとんどの社員から
○○ちゃん」と、ちゃん付で、
呼ばれていたのでした。


面接が終わり採用が決まると。

事務室に、
社長の奥さんが静々と
母屋の方からオボンに乗せた
お茶を運んできてくれたこと
覚えています。

社長の奥さんは、
とても美人さんで、
会社がもっと
都心に近い場所だったならば。

フラワー関係の仕事を
テレビ番組の中で紹介するような
仕事をしても良いような方でした。

しかし、「イーさん」は、
この奥さんの事が
気に入らないらしく。

ハウスの前を、
お子さんを迎えに行くのに
車を走らせて出かけるたびに、
ちらりと目を走らせると
「チッ、遊び人が」と
毒づくのでした。


そして、
事務室には経理のオバさまが、
いつも控えていました。

この経理のオバさまは、
先代の社長が、いまのJAに
勤めていたオバさまを、
会社に引き抜いてきた方なのだと
やはり、「アーさん」が
私に教えてくれたのでした。

この方は、社長のお母さんと、
たいへん仲が良く専務などは
子供扱いをされていたのでした。

それで、
これはその経理のオバさまに
言われたのでしょうか。

ちょうど、リースの担当の、
「イーさん」が、温室ハウスに居るから、
会っていきなさいとの事になりました。

事務所から、
案内されて沢山の観葉植物の
並んだハウスに行くと。


そこには、
背が高く、ちょっとだけ細身の
頭にはタオルをかぶり
会社のネームの入った作業着姿で、
黙々と観葉植物の手入れをしている
「イーさん」がいたのでした。
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「イーさん」の
トレードマークは、
頭に被ったタオルで。

夏でも、冬でも、いっでも
会社にいる間はかぶっていました。

そして、
前職はアパレル関係の全国チェーンに
いたと言う割には服装には無頓着で、
夏は上着は袖なしの白のタンクトップ
一枚に、下は作業着の裾をひざ下まで
まくり上げていると言う様な
ラフな格好でした。

私が、会社に入ってしばらくして
「イーさん」のタオル無しの
顏を始めて見て衝撃を
受けたことが有りました。

「イーさん」は、タオルを取ると
物凄く美男子だったのです。

髪は、オールバックで
少し白髪が混じった
渋い二枚目だったのです。

きっと「イーさん」は、
この渋い二枚目は
植木関係の仕事には
不釣り合いだと考えて。

それを
隠すために何時もタオルを
被っていたのかなと、
私は思ったのでした。



ハウスの中で、
はじめて顔を合わせた
私と、「イーさん」は、
軽くあいさつを交わしました。

すると、
「イーさん」の方から、
「ところで、いつから来てくれるの」
との事でした。


私が、とっさに
「今からでも、いいです」と
返事をすると。



「イーさん」は、
少し驚いたような顔をして。
それから、
嬉しそうな顔になると、
「じゃあ、明日からお願いするよ」と
言ったのでした。



「では、明日から伺います」と言って、
私が帰ろうとすると。


「イーさん」が、
私を呼び止めて、このように
言ったのでした。


「悪いけど、自分専用のハサミを買ってきて
欲しいんだよね」と言うのです。


会社にあるハサミを使っても良いのだけど
「自分のハサミだと、大切にするだろう」
と言うのです。


そして、「イーさん」は、
私の目の前で観葉植物の葉っぱを
一枚とるとハサミを少しだけ開き。


そのままハサミを真っすぐに葉の中央へ
進めました。

すると、
「イーさん」の、持っていた葉っぱは、
真っ二つに切れて温室の床に落ちて
行ったのでした・・・。

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ちなみに、「アーさん」のハサミは、
開いて葉を切ろうとしても、ガシガシ
と葉を挟んでしまって切れないハサミ
だった事も付けくわえておきます。


それを見た私は、さっそく
「イーさん」の言ったとおりに、
その日のうちにハサミを買い、
少し緊張して次の日の朝を
迎えたのでした・・・。

(2019.9.5加筆、修正)
「愛すべき人たち」4
へ続く

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